WORKS業務内容

業務内容 WORKS

浮き上がり接着作業

油彩画OIL PAINTING

油彩画の
保存と修復CONSERVATION AND RESTORATION

  • 油彩画の支持体は、麻布、綿布、絹布、紙、板、金属板と、様々な材料が用いられています。油彩画の構造は、支持体、目止め層、地塗層、絵具層、ワニス層と、重層構造となっています。性質の異なる材料が複雑に組み合わさり、微妙な調和を保って成り立っているのが油彩画です。したがって保存や修復にあたり、油彩画を構成する各材料についての理解が重要になります。

    一般に油彩画は丈夫であると考えられていますが、材料相互間のバランスが保たれなくなった時、ことのほか弱さを露呈します。

    油彩画の修復は、こうしたバランスの崩れた作品に対し、損傷の進行を現状に留め、損傷部位が鑑賞の妨げにならない程度まで処置する作業です。

基本的修復工程

調査・修復計画の検討
 まず写真撮影を行い、修復前の状態を調査書に詳しく記録します。調査結果をもとに修復方針を検討し、具体的な計画を立てます。
洗浄
 作品の汚れには、煙草のやに、埃、塵、虫の分泌物、黴などの付着があります。またワニスが著しく黄変している場合もあります。これらは厳密な耐溶剤性テストの結果をもとにして除去します。
浮き上がり接着
 冠水、支持体の伸縮、人為的な取扱い、経年劣化などが原因となって、絵具層及び地塗層は、支持体から剥離する場合があります。剥離は剥落へと進行する危険性がある為、膠水や合成樹脂の接着剤などを用いて接着し、剥離の進行を止めます。
変形修正
 画面の変形(凹凸)には、絵具層や地塗層の亀裂により生じる変形と、支持体の伸縮が原因で生じる変形などがあります。これらの変形は、加湿、加温、加圧またはストレッチャーを利用した方法などで修正します。
ルースライニング・裏打
 支持体が脆弱であったり劣化や損傷を被っている場合、支持体に補強を施します。支持体の損傷がとくに大きい場合は、布を接着して補強する裏打ちを行いますが、多くの場合布を支持体の下に張り、接着を行わず支持体を下支えするルースライニングという方法を採用します。
充填整形
 補彩を行う前に、絵具の欠損部分へ充填剤を詰め、周囲の絵肌に合わせ充填部分を整形します。
補彩
 充填整形をした部分に、水彩絵具や修復用溶剤型樹脂絵具を用いて補彩をします。
殺菌防黴
 画面や支持体裏面に発生した黴や微生物、また、それらが原因で生じた損傷部が認められた場合は、洗浄によって除去した後、殺菌防黴剤を塗布することがあります。
ワニス塗布
 画面保護のために、必要に応じてワニスを塗布します。
額装
 損傷や汚れが絵画作品に限らず額縁にも及んでいる場合は、並行して修復していきます。修復した作品が安全な形で額縁に固定されるよう、固定材料や裏板、アクリル板の調整も行います。
  • 【修復前】作者不詳「風景」 個人蔵

  • 【修復前・裏】

  • 【修復中・洗浄途中】

  • 【修復後】

紙作品(水彩・デッサン・版画)DRAWING

紙作品の
保存と修復CONSERVATION AND RESTORATION

  • 水彩画、デッサン、版画などの紙を支持体とする作品は、様々な要因により劣化し、損傷を受けます。紙作品は、光、温度、湿度、大気中の汚染物質、黴などの微生物、虫害など、環境問題に対して敏感に影響を受けやすい性質を持っています。また人為的な不注意によって生じる物理的な破損があります。作品を取り扱う際に、乱雑な扱いをしたり、あるいは不慮の事故などによって、紙作品は容易に破損してしまいます。

    額装された紙作品では、酸性の強い裏板や台紙との接着によって紙の劣化が促進されることもあります。また台紙に固定するための接着剤やテープ類が、しみの原因となることもあります。

    作品の置かれる保存環境を整え、適切な材料を使用して保管することが、劣化を防ぐ重要なポイントです。

修復のようす

  • 【乾式洗浄】
    ジャン=フランソワ・ミレー「羊飼いの女(大)」

  • 【旧処置除去】
    ジャン=フランソワ・ミレー「鵞鳥番の少女」

  • 【水洗】
    ジャン=フランソワ・ミレー「鵞鳥番の少女」
    山梨県立美術館蔵

複合作品MULTIPLE

複雑化する
複合作品の損傷INCREASINGLY COMPLEX DAMAGE

  • 現代の多様化する表現に伴って、様々な形体の作品が生まれています。制作に使用される材料も制限はありません。木、紙、布、金属、合成樹脂など、性質の違う複数の物質で複雑に構成された作品も多く、それらは将来どのような損傷が生じるのか予測が困難です。また、従来には無いコンセプトを持つもの(例えば永続性を求めていない作品)もあり、修復に際して、それらにどう向き合えば良いのか対応を問われています。

    このように、多様化する作品に対する保存修復理念は未だ確立されていないのが現状です。当研究所では、この分野において修復の方向性を導き出すために、他分野の専門家と連携し、作品の持つコンセプトや使用される様々な材料についての理解を深め、その知識と経験を積み重ねていくことが重要だと考えています。

修復事例

  • 菊畑茂久馬「植物図鑑2」(側光線写真)いわき市立美術館蔵

  • 高山良策「題不詳」(側光線写真)豊島区蔵

大型作品・その他LARGE SCALE

大きな作品や
壁画の修復RESTORATION

  • 当研究所では、多くの大型作品や壁画など、様々なジャンルの作品を手がけており、研究所内ではもちろん、現地に行って作業を行う場合もあります。

修復事例

  • 百段階段  ホテル雅叙園東京蔵

  • 百段階段  ホテル雅叙園東京蔵

  • 猪熊弦一郎「デモクラシー(西壁)」 慶應義塾大学蔵

  • ベルナール・ビュフェ「キリストの苔刑」「キリストの復活」
    ベルナール・ビュフェ美術館蔵

ご相談・お問い合わせCONTACT US

修復研究所21へご相談やご質問がありましたら、
お気軽にお問い合わせください。